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ハート・ロッカー

戦争 映画

ハート・ロッカーは爆弾処理のプロでならした帰還兵が戦地に再び戻る物語である。一旦帰国した彼がどのような経緯で戦地に戻る気になったのか。彼の帰国から戦地への再出発までの様子が淡々と描かれる。この映画のクライマックスは最後のシーンにやって来る。彼がいよいよ戦地に再突入しようとした時はじめて仲間が戦地に帰って来た理由を尋ねる。彼は迷惑がる様子もなく苦笑いを浮かべながら黙って前を見ている。答えは彼の口から出て来ない。というより答えることを敢えて拒否しているように見える。気まずい沈黙が流れるが、やがて戦車の外で爆撃音や銃声音が飛び交い始める。それでも尚彼の答えを待つかのように兵士たちは沈黙する。前方を警戒する何も言わない彼の横顔を写し続けたまま映画は終わる。郷里の巨大なスーパーストア。レジに並ぶ買い物客の群れ。棚に積まれた大量の商品の山。死んだ戦友。死んだ戦地の親や子供。彼の脳裏に飛来する記憶は確かで鮮明だ。その意味も理解している。しかし彼は誰も非難しようとしない。そして、戦争を語ることをやめたように思われる。「戦争」と「戦争を語らないことを選んだ兵士」。作者の意図した構図の意味がこのラストシーンに至ってついに結実する。天才スピールバークさえ見落とした戦争の爪痕がこの映画において見えてくる。

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