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「デフレは悪だ」は強者の論理

デフレ 金融緩和

日本では強者である企業や資産家が「デフレは悪だ」と言い続けるので、弱者である個人や平均的な労働者まで同じことを言い始めている。強者の論理が優先され、しかも被害者であるはずの弱者がその論理を熱狂的に支持するという馬鹿げた現象が今の日本に起きている。インフレになると預金の価値が目減りして物価が上がる。実体経済が改善しないインフレは資産が預金だけの普通の労働者にとって致命的である。「デフレは悪」だと言ってインフレ政策を取れば、たとえインフレと実体経済改善が伴わなくても企業と資産家は暴利を手にし、富裕層との経済格差は拡大する。インフレ政策は強者優先の論理なのである。

日本人のmentalityは70年前と一向に変わっていない。大戦の開戦と敗戦、原発再稼働、憲法改正、経済政策どれを取ってもこの強者優先の論理がまかり通っている。しかも救いようがないのは、犠牲となる弱者が強者の論理を喜んで受け入れているという事実である。この傾向を改めないと、70年前に大戦によって受けた「弱者の悲劇」をまた日本人は経験する事になるだろう。

預金だけが資産である普通の労働者にとって、デフレは資産価値を上げ、反対にインフレは資産価値を下げる。デフレ悪説による金融緩和政策は強者優先の論理から生まれた魔物だ。表向きはデフレ脱却による弱者救済と雇用の改善を目標として掲げるが、それはポーズでしかない。彼らにとってインフレになるかどうかは重要ではない。重要なのは、バブルが起こるかどうかということだけだ。結果がどうであれ金融緩和によって企業と資産家が儲かればそれで良いのである。

中央銀行と政府は無理にインフレを起こそうとして失敗している。つまり需要拡大が見込めないのに日本銀行が株や土地、もしくは国債を大量に購入し続け、政府も多額の歳出を行っている。株や土地を保有していた人や、政府の歳出により潤う人たちの預金だけが急激に増加している。しかもデフレはそのままである。お金の価値が高いまま預金が急増するのだから資産家に取ってこれほどありがたいことはない。インフレを起こすのに失敗しようとしまいと関係なくインフレ政策自体により、預金以外の資産価値が急騰する。資産家はそれらの資産をバブルがはじけないうちに売り逃げて利益を確定する。彼らの預金は急増し、預金以外に資産のない中間層との経済格差はどんどん広がる。彼ら富裕層にとってインフレなど起こらずにこのまま金融緩和だけを続けてもらったほうが都合が良いのだ。

一方資産が預金だけの普通労働者はどうだろうか。実体経済が改善しなければインフレは彼らにとって致命的だ。彼らにとって唯一の資産である預金の価値は下がり、物価は上がる。

ここ20年間緩やかなデフレが続く中、日本の消費者物価指数は、横ばいが続いている。大規模金融緩和前は、国民の平均賃金は4%程度上昇していた。さらに多くの社会人は勤続年数が長ければ、それなりに昇給していたはずである。資産は預金だけだからデフレでお金の価値が上がるので預金の資産価値は上がる。しかも物価が下がっているのだから贅沢をしなければ生活は十分成り立つ。つまり、弱者である個人、資産が預金だけの平均的な労働者にとって、デフレは善なのだ。確かに正規労働者にとってデフレはリストラの危険を増大させる。しかしデフレの中で正規労働者の賃金だけが下がらないなんて虫のいい話が通用するわけがない。セイフティネットの強化の方がヘリコプターマネーよりはるかに優先されるべき政策のはずだ。

 一方、黒田バズーカと称される大規模金融緩和が行われる前のデフレの間、最悪な思いをしたのは、企業や資産家である。株は下がるし不動産価格も下がる。企業は減収で成長できない。デフレは預金以外の保有資産価値を下げるのである。企業や資産家は大量の借金をして投資をしているからデフレのために借金の実質負担も増えてしまう。
 インフレ政策前のデフレは庶民と資産家の格差を縮めた。そこにリフレ派が乗り込んできてインフレにして格差を縮めようと言い出した。それはバブル景気を生み出すための言い訳だった。インフレになろうとなるまいと貨幣量が増えて資産バブルが起これば彼らはそれでいいのである。

需要が生まれないところにインフレを誘導しても実体経済は動かない。(http://pkotoba.hatenablog.com/entry/2016/08/17/215525)

無駄な「金融緩和」は庶民と富裕層の格差を拡大させるだけだ。それが世の中を不安定化させる。尋常な価値観が消え去り強者の論理だけが語られる恐ろしい社会が出来上がるのである。

 

参考記事

http://diamond.jp/articles/-/34922?page=2