読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ポピュリスト トランプ氏の主張

f:id:pkotoba:20160518083454j:plain

ドナルド・トランプポピュリズムを背景に登場したと考えられています。ポピュリズムとは大衆の感情に訴えることで得票し、政権を握る手法であり、経済混乱と格差社会が先鋭化したときに出現します。平等主義保護貿易主義、移民反対主義 安全保障に関する非干渉孤立主義が強調され、候補者は「平等な社会」を約束して当選します

しかし歴史学者に言わせると、ポピュリスト本人は「平等な社会」の構築にはまったく興味がなく、取り上げた富を政権延命のために使い、残りを利益団体に回してしまいます。その結果、政治は混乱し、経済はめちゃくちゃになると言われています。この見解は主に南米型ポピュリズムの歴史において見出された結論です。

米国でも過去にポピュリストの政治家が大統領になりかけたことがありました。大恐慌直後の大統領選で、ルーズベルトに対抗して立候補した民主党議員のヒューイ・ロングがそれです。はたして彼も南米型ポピュリストのように経済や政治を破綻させてしまったのでしょうか。残念ながらその答えは誰も知りません。彼は道半ばで暗殺されてしまったからです。

一方、日本において、我々は、ポピュリズムに対する幻滅を、日本民主党政権の失態により、すでに体験済みです。しかし、ヒューイ・ロングの主張は、1935年当時に米国に起こった社会福祉制度の見直しのきっかけを作りました。一方、日本旧民主党だけが、配偶者及び3親等以内の親族による議員世襲を禁じています。はたしてトランプは選挙に勝つことだけを狙った無責任なポピュリストにすぎないのでしょうか。

この問いにたいする答は、恐らくトランプ本人にも解らないくらい、複雑な問題をはらんでいます。何故なら、右派に対する左派の主張というものは、元来、ポピュリズムの要素を、内包しているからです。富裕層への増税、貧困者の所得税廃止、皆保険の設置、関税の引き上げ、アジアや中近東の安全保障に関する非干渉、移民の制限、イスラム教徒の入国禁止など、トランプの主張は、ポピュリズムの常套句で満たされています。それにもかかわらず、彼がここまで選挙に勝ち抜いているのは、彼が優れた「ディベートメーカー」であるからに他なりません。

この点は、彼の日本に対する主張の中にも、認められます。たとえば彼は、「日本は日米安保条約により、徴兵制を逃れ、本来負担しなければならない防衛費を教育、経済対策、福利厚生に回している」と非難しています。

これをさらに言い換えれば、こういうことでしょう。「日本は米国にないような独自の福祉国家、経済的社会主義国家を構築した。しかしこれは、決して米国が憧れるべきものでも、目指すべきものでもない。なぜならば、日本式資本主義は、平和憲法に支えられた、「非武装・経済主義」の恩恵の上に成り立っているからだ。こうした、「平和」の名を借りた「利己的、商人主義的国家主義」を、米国が、わざわざ尊重し、身を粉にして守るべきだろうか。」

 広瀬隆雄 blogos、 パトリック・ハーラン ニューズウィーク日本版  (一部引用)